教えるって、こんなに難しい。そう感じた私が、少しだけ育成がラクになったきっかけ。
「育てる」って、こんなに難しいとは思わなかった
教える立場になって、初めて気づいた。
仕事を覚えるより、「人に伝える」方が何倍も難しいってことに。
私は介護職として現場に立ち、
ある日から、新人スタッフの指導を任されるようになった。
自分なりに丁寧に教えてるつもりだった。
でも、新人はすぐに辞めてしまったり、反応が薄かったり──
「私、育成に向いてないのかもしれない」と悩む日々が始まった。
私がぶつかった「育成の壁」
ある新人スタッフに、何度か同じことを注意した。
「ご利用者さんへの声かけ、もう少し大きな声でお願いしますね」
「清拭のとき、少し手順が違ってましたよ」
そのたびに「はい…」と返事は返ってくるけど、次の日にはまた同じことの繰り返し。
注意する → 気まずくなる → 話しかけにくくなる
そんな悪循環ができていた。
「私、伝え方が悪いのかな…」
「私の言い方って、責めるように聞こえてるのかも…」
気がつけば、新人だけでなく、自分自身にもどんどん自信がなくなっていった。
うまくいかない原因は、「やり方」じゃなく「関係性」だった
私が一方的に“正しさ”を伝えようとしていた。
でも、相手の受け取り方や心の状態には、全く目を向けていなかった。
育成って、「知識の伝達」じゃなく、「関係性の構築」なんだと気づいた。
それに気づいてから、私は教え方を少しずつ変えていった。
新人育成で見えてきた、5つのヒント
1. 「教える前に、知る」が最優先
どんな人なのか?
何が得意で、何が不安なのか?
それを知らずにマニュアルだけ渡しても、届かない。
→ たとえば趣味を聞くだけでも、会話が広がり、指導中の空気がやわらぐ。
雑談ひとつで、関係性は大きく変わる。
2. 指摘の前に「できていること」を伝える
「ここはまだできてない」ばかりが続くと、誰だって心が折れる。
「あいさつの声、明るくていいですね」
「今日の誘導、とても安心感がありました」
褒めることが目的じゃない。
“見てくれている”という信頼を育てる手段なんです。
3. 指導は「正解」より「背景」で伝える
「それじゃダメ」ではなく、
「なぜそうするのか」を一緒に考える。
「このやり方の方が、ご利用者さんが安心しやすいんですよ」
「ここでは時間より“丁寧さ”が優先されるんです」
背景を共有すれば、納得が生まれる。
4. あえて“余白”を持つ
つい細かく教えすぎてしまうことがある。
でも、ある程度「任せる」ことで、考える力が育つこともある。
失敗も含めて成長の一部。
育てるとは、「信じて待つ」ことでもある。
5. 自分自身も「育つ途中」だと認める
「教える側=完璧」ではない。
伝え方に迷っていいし、うまくいかない日があってもいい。
「今日はうまく伝えられなかったな」と振り返ることで、次の1歩が見える。
その姿こそ、後輩たちが見て学んでいる“育成の背中”なのかもしれません。
それでも伝わらないとき、どうすればいい?
人間関係には“タイミング”がある。
- 今は距離を置いた方がいいとき
- 第三者の力を借りた方がいいとき
- 相手の環境が整っていないとき
そんなときは、「無理に伝えようとしない勇気」も必要です。
「今は届かないかもしれないけど、それでも信じてるよ」
その気持ちは、必ずいつか届くと信じています。
まとめ:「育てる」は、教えることじゃなく、寄り添うこと
新人を育てることに悩んでいるあなたへ。
大丈夫です。
悩むということは、ちゃんと向き合おうとしている証拠です。
育成に正解はありません。
でも、心を込めて関わった経験は、いつか必ず自分の糧になります。
「育てる側」もまた、育てられている。
この言葉が、いまの私の支えです。
焦らなくていい。うまくいかなくていい。
あなたのその優しさは、ちゃんと伝わっています。
そして、あなた自身もまた、育っている途中なんです。
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